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ソーシャルグッドマーケティング

室谷良平。ベンチャーのマーケター。本業の傍らで地元・北海道長万部町の活性化のためのデジタルメディア「リマンベ」を運営。インターネット、マーケティング、まちづくりがライフーワークです。

カタカナが多い「ブランディング」は、立法・行政・司法で例えると分かりやすい

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ブランディング」はわかるようでわかりにくい、非常に抽象度の高い概念だと思っています。
 
 
最近では「採用ブランディング」といった領域のものもよく目にするようになったり、一時期では「セルフブランディング」という言葉が持てはやされたこともありました。
 
私自身、マーケティングに携わる者として、ブランディングに関する様々な書籍やウェブ記事を読み込んで学習してきましたが、一見すると馴染みのある領域でわかりやすいと思いきや、そうではないのだなと感じています。
 
カタカナの用語が非常に多かったり、書籍によっては言葉の定義がばらばらで、腹落ちがしづらい概念だと感じました。
 
ブランディング」について調べた内容を、頭の整理と思考メモも兼ねて書いてみたいと思います。
 
 
【目次】
・なぜブランディングを行うのか
・ブランドはどこにある?それは消費者の脳にある
・ブランドは蓄積されていく資産である
・「立法、行政、司法」に例えてみる
ブランディングとはどう生きたいかが示された陰影である
 
 
 

なぜブランディングを行うのか

まず、ブランディングの目的とは、それは「選ばれるようになる」ための活動であると考えています。
 
ブランディングにおいては、「他の商品との差別化のため」ですとか、「付加価値をつけるため」「好きなってもらうため」「応援してもらうため」「信頼を蓄積していくため」などとも言われることがありますが、それはすべてこの「選ばれる」ための手段です。
 
そもそも何のためにするのか」の目的がずれると、ブランディングの効果が事業の伸長に結びつきません。
 
 
ブランディングの効果としては、
 
・LTVの向上(リピート化や、スイッチングによる顧客離れを防ぐことによる生涯顧客価値の向上)
CPAの低減(クチコミや紹介等で、お客がお客を呼ぶために新規顧客獲得コストの低減)
・価格プレミアムの実現(ブランド価値向上により価格弾性力が増し、高価格による利益率改善が実現)
 
などがあります。
 
差別化でいうと、地域の特産品をつかったグルメにその例が多く見られます。他と違ったものを出すため、トライアルはしてもらえるけど、決してリピートはしないようなもの。また、クチコミにもつながらなく、観光の体験で何の足しにもならないものです。
 
 
 
選んでもらえるために「◯◯といえば◯◯」「◯◯するなら◯◯」という選択の際に有利に働くようなイメージ(連想)をもってもらうことです。このようなイメージを顧客の脳に焼き付ける一連の活動だと考えています。
 
競合がひしめく環境のなかでも、お客さんの頭のなかに「選ぶ理由」をつくりあげていく活動ともいえます。
 
選択の際に有利に働くための差別化であって、付加価値であって、信頼なのです。
この考え方の例えでうまいと思ったのが、『ブランディングの基本』にある、「トーナメントのシード権」という説明でしょう。
 

 

この1冊ですべてわかる ブランディングの基本

この1冊ですべてわかる ブランディングの基本

 

 

 
具体的な例でいえば、ベンチャーが力を入れる採用広報であれば、入社してもらうことがゴールです。
 
そのために成長志向のひと、ワークライフバランス、会社の雰囲気や考え方を上手に伝えて、選択に有利になるように働きかけていきます。求職者「成長中ベンチャーなら◯◯」「エンジニアとして活躍するなら◯◯」といったブランディングをしていき、惹きつけていくことです。
 
観光であれば、観光地として選んでもらうため、特産品を選んでもらうための活動です。まずは「訪れてみたい」の来訪意向の数字を上げていく活動になるでしょう。
 
 
 

消費者の頭の中に「ブランド」がある

次に、「ブランド」とはなにかを整理していきます。
 
ブランドの由来は「刻印」とされています。
 
『社員をホンキにさせるブランド構築法』の定義では、「ブランドとは、購買ニーズが発生したときに、特定の商品やサービスを思い起こさせ、購買決定に影響を及ぼす力を持つものです。」とあり、これはビジネスの目的を忘れさせない良い定義だなと思いました。

 

社員をホンキにさせるブランド構築法 (DO BOOKS)

社員をホンキにさせるブランド構築法 (DO BOOKS)

 

 

 
そして、ブランドとは「消費者の頭のなかにあるイメージの総体」と考えています。
この状態をつくりあげていく活動がブランディングです。
 
広告などのコミュニケーション活動やウェブサイトで発信する内容や、事業に関する行動、取り組み方などの、ありとあらゆるアウトプット(発言と行動)の積み重ねによって、ブランドのイメージが消費者の頭のなかに蓄積されていくようにしていくのです。
 
ブランドができたかどうかは「消費者の頭のなか」を開いてわかるものです。

 
消費者がそのブランドのことを考えるときに頭のなかで思い浮かべられる意味、ストーリー、イメージのほか、思い浮かべているときに喚起される感情や情動、それらをまとめた総体です。
 
 
強いブランドとは、意味がはっきりしているものになると思います。
 
アップルのかっこよさ、ナイキの刺激的な姿勢、スターバックスマクドナルド、ユニクロの親しみ、コムデギャルソンの革新性、掃除機のダイソン、トースターのバルミューダなど。
 
強いブランドとは、そのブランドの世界観や存在意義などの「らしさ」がわかりやすいことです。細かく言うと、セマンティックボーダー(意味論上の境界線)が明確であること。一目でそれとわかる状態であることです。
 
 

ブランドは蓄積されていく資産である

蓄積していったブランドのイメージを「ブランドエクイティ」と呼ばれまして、その名のとおり、ブランドは資産となっていくものです。元USJCMOだった森岡さんも著作のなかで仰っていましたが、「資産」という概念の例えはわかりやすいなと思いました。
 
なお、『パワーブランドの本質』では「預金口座」と例えられており、これは顧客の頭のなかのブランドイメージの預金口座といえるものです。
 

 

新版 パワー・ブランドの本質

新版 パワー・ブランドの本質

 

 

 
ブランドエイクエティの蓄積で重要となるのは、「強い購入の理由になるものを消費者の頭のなかにつくっていくこと」です。言い換えれば「その選択で間違いない」の状態をつくりあげていくことだと考えています。
 
たとえば、掃除機なら「吸引力」、シャンプーなら「香り」と「粘度」、入浴剤なら「香り」と「湯船への色のつき具合」が重要な要素となることが多いでしょう。
 
こういった売れる魅力の要素(商品やサービスがもつ機能や情緒の属性)を特定して、その魅力を存分に伝えていくことがブランドイメージの蓄積で効果的です。とくに初回利用(トライアル)の段階で重要な鍵となります。
 
また、クチコミやリピートにつなげていくにあたっては、印象の記憶を左右する引き金(トリガー)が、一連の「ブランドの体験」です。預金口座でいえば、かなりの大金が貯まっていくことになります。逆にいえば、ガッカリさせてしまったらお金が引き落とされてしまうのと同じように、マイナスとなってしまうため、見た目も中身も重要であるとわかります。
 
こうして評判づくりを促進していって、紹介から利用者を次々に増やしていくことにもつなげられます。
 
そうして、ブランドエクイティがビジネスにつながっているかどうかを測定する指標には、知名度、好意度、購入意向などがあります。
 
 
 
 

「司法、立法、行政」に例えてみる

ブランディングといえばロゴや、シンボルマーク、ネーミング、パッケージなどの目に触れる特徴的なものを整える活動が第一に思い浮かべるものですが、それはブランディング活動の一部です。
 
わかりやすく説明するならば、ブランディングの活動は大きく3つに分けられます。
 
立法、行政、司法です。
 

ブランディングにおける立法

立法が、どう見られたいか、どういう意味を持たれたいかの理想をつくるものです。このブランドアイデンティティの策定を指し、「目指すブランドの北極星」と例えてもいいかもしれません。「ブランドアイデンティティ」「ブランドビジョン」と呼ばれています。
 
何を伝えるかのほかに、どう伝えるかもイメージの効果的な蓄積で重要となり、そのブランドの人柄、雰囲気、立ち位置(ポジション)を策定していきます。企業や製品を擬人化して、どういう人っぽさで打ち出していけば効果的なイメージをつくりあげていくことができるかを考えていくフェーズです。
 
これらは「ブランドパーソナリティ」と呼ばれ、たとえば風邪薬のバファリンであれば「やさしい母親とその愛情」というブランドキャラクターを打ち出しています。ナイキは反逆児のようなカウンターな姿勢を、ボディショップエシカルなイメージをもっているようなものです。
 
 

ブランディングにおける行政

行政は、目的である「選択肢に入れてもらい、選んでもらうため」に、ブランドイメージを消費者の頭のなかにつくりあげていくために伝達していく、発信していく、そのような日々のコミュニケーション活動を行うことです。
 
発信する対象、ブランドイメージを浸透させていく対象は消費者に限らず、主体となる企業や組織といった内部のひとたちもそうですし、仕事で関係するステークホルダーも重要な対象となることもあります。これは「ブランドコミュニケーション」とも呼ばれています。
 
 
 

ブランディングにおける司法

司法は、その日々のブランディング活動が立法になっているかを管理していきます。「見え方のコントロール」「アウトプットのコントロール」といってもよいでしょう。
 
ブランディングにおいては扱う変数が多い実務であるため、担当間でしっかりと定義や認識を揃えておかないと、アウトプットにギャップが生じやすいものです。組織として共有されていること、社員全員で共有され実践を続けることがブランディングの最善の方法となります。
 
発信の軸がぶれてしまうと、統一されたイメージが蓄積されていきにくくなるため、マネジメントが重要になります。ロゴを改変して使用しないこと、イメージカラーを統一することなどが該当します。これは「ブランドマネジメント」とも呼ばれています。(ブランディング活動の総称を「ブランドマネジメント」と呼ばれることもあります)
 
 
  
 

ブランディングとは、どう生きたいかが示された陰影である

ヴァージンやボディショップのように、人生そのものがブランドになって、人を魅了している。
 
セルフブランディングがいまだ盛んな業界が多いが、本質を忘れずに、自分自身が楽しんで自分の人生を歩むことがブランドにつながるのだと思います。
 
 
製品ブランディングには該当しないかもしれませんが、企業ブランディングや人物のブランディングにおいては、地道に志をもちながら日々の行動を積み重ねて、それをしっかりと伝えていき、顧客の脳にイメージをじっくりじっくり焼き付けて、顧客に欲求が生まれた瞬間に検討の選択肢に入れてもらうことができ、そして安心して選んでもらえること。
 
信念を持ち、体現して生きていくこと、それがブランディングの活動だとも思っています。
 
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